ニューノーマルな時代の
ニューボーイズグループ、
『熊猫堂ProducePandas』


C-POPの大本命かもしれない(!?)、すでに各所で話題沸騰中の中国出身5人組ボーイズグループ、『熊猫堂ProducePandas』がついに日本でCDデビューを果たす。

C-POPとは簡単にいえば「中国大陸や香港、台湾など、中華圏発信のポップ・ミュージック」のこと。普通話(中国大陸の標準語)や台湾華語(台湾の標準中国語)をベースとしたマンドポップ、香港などで使用される広東語をベースにしたカントポップなどを総称したものだ(台湾発のものをT-POPと呼ぶ場合もある)。全世界的にBTSやBLACKPINKといったK-POPが定着した現在、次に“くる”音楽として注目すべき存在と言えるだろう。

日本ではすでに落日飛車などの台湾のロック/ポップスや、(C-POPではないが)韓国・中国大陸出身のメンバーから成るEXO、韓国・台湾・日本出身のメンバーがいるTWICEなどグローバルな構成のアイドルグループも人気だが、『Produce Pandas』は既存のアーティスト、そのどれとも似ていない、ありそうでなかった「まったく新しいアイドル像」を提示するユニークで革新的なグループである。

なにが新しいのか。それは写真を見ていただければおわかりのとおり、「プラスサイズ」の男子で構成されるグループだということ。ほっそりした体型がもてはやされる(どころか、スリムでなくてはいけないという強迫観念的でさえある)アイドルという世界に一石を投じるその存在感は、強いインパクトとともに、わたしたちの価値観がいかに固定観念に縛られていたか思い知らされることだろう。『Produce Pandas』のプロジェクトには「今のメインストリームである美の基準にない人々が自分自身を愛し、多様性や違いがあってもいいんだよということを一般の人々にも認識させて、自身を愛するロールモデルを作りたい」という思いが込められているという。まさしく、「スリム=美」という従来の定義をはずれ、すべての身体をありのままに愛そうという全世界なムーヴメント「ボディポジティブ」を体現するグループ。欧米のファッション業界を中心におこったこのムーヴメントをアイドルという世界にもちこむ、時代の革命児になりうるのだ。

そして、『Produce Pandas』がすばらしいのはその存在自体がダイバーシティ的ということだけではなく、歌唱力やダンスなどの本気のパフォーマンス力。プラスサイズだからってコメディなグループではないのだ(ここ、重要)。これは2018年にプロジェクトがスタートして以来、レッスンやトレーニングを重ね、ようやくデビューにこぎつけた成果だろう。リーダーでビジュアル担当(元モデルでもある)でみなのまとめ役DING、メインダンサーでTikTokの中国版「抖音」で人気者だったMr.17、メガネがトレードマークで数学が得意なメインボーカルHusky、ムードメイカーでコメディ担当のCass、『Produce Pandas』のマスコット的な愛されキャラの最年少メンバーでパフォーマンスとなると歌も表情の作り方もすごいメインボーカルOtter。

バラバラな個性の5人がグループとしてパフォーマンスしたときのキラキラ度といったらまるでポップスの魔法だ。

まずはデビュー曲である「辣辣辣 -La La La-」のミュージック・ビデオを見てほしい。なにはなくとも5人のパフォーマンスに魅了され、「なんてかわいいんだ」とひとりごちてしまうことを約束する。

また、なんといっても曲のクオリティ。1000曲を超える候補から選ばれた(規模がでかすぎ!)という先述したデビュー曲「辣辣辣 -La La La-」のソングライティングはJustin ReinsteinやWoo Min Lee “collapsedone”。彼らは嵐やTWICE、SixTONES、NiziUなどの曲も手掛けるソングライターだ。「碎碎念 -Sui Sui Nian-」はシンガポール、中国大陸、マレーシアのミュージシャンが関わっているし、「盤他 (Pan Ta)」は台湾のミュージシャンが参加したり、「The ONE」はEXILEや少女時代を手掛けたことで知られる日本のSTYが制作するなど、アジアを中心に世界の作家陣が参加し、バラエティ豊かでワールドワイドな超一級のサウンドとなっている。

最後に、例のオリンピック開会式騒動後に発表された渡辺直美の言葉を引用しておこう。「実際、私自身はこの体型で幸せです。ひとりの人間として思うのは、それぞれの個性や考え方を尊重し、認め合える、楽しく豊かな世界になれる事を心より願っております」。『Produce Pandas』はそんな楽しく豊かなニューノーマルの時代を生きるニューボーイズグループなのである。

川上健太(CDジャーナル編集長)

※雑誌「CDジャーナル」ではプッシュアーティストとして、2021年春号、2021年夏号にて裏表紙を飾りました。
最新号の2021年秋号でも中ページにて6ページの最新インタビューを掲載。




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