アヴェマリアといえば、祝福の歌になると思うのですが、この歌は祈りの歌に近いと考える。「明日は必ずやってきますが、救いのない明日では信仰がありません。 」そんな嘆きとも解釈できる祈りは果たして神に届くのであろうか。自分に対しての怒りと悲しみと希望と懺悔が複雑に入り混じっている楽曲。　…松本慎一郎

階差とは数学でよく聞く言葉なのだが、一般に隣り合うものどうしの差を意味する。時間であれば現在と過去、未来と現在、隣り合う時間の階差にどのようなドラマがあり、そこにいる住人はどのように生きるか、ちょっとした歯車の掛け違いによってまったく違うことになる、そんな繊細さを表現した。　…松本慎一郎

上品で形式的な方向とはまったく逆で、しかしながら下品ではなく、無骨ながらもまとまりがある感じにしようと試みた。剛毅にてロクでもない、しかし魅力的な人間たちの生き様はまさにタイトルどおり濛々たる黒煙が咲きたるようである。そんなオンボロ汽船上での物語を音としてまとめた作品である。　…松本慎一郎

ＰＣゲームのエンディングテーマとして書き下ろした曲であるが、実は曲の終わり方がきちっとした終止のものと終止感がないものの２パターンある。私は本当のこの曲の終わり方は後者であると考えている。これから先の物語は受け取るご自身が考え、本当の曲の終止は各自の解釈にお任せしたいからである。　…松本慎一郎

すべての歴史はすでに決定しているという概念であるアカシックレコード。その概念自体が一人の少女であり、その少女にまつわる周りの人々＝人類はどういう考えを持ち、どう理解するだろうか…というシミュレーションを曲にした。やっぱり人間は愚かな過ちを犯し、少女は泣いて滅びを待っていることだろう。　…松本慎一郎

広大な海とは、一人の少女にとって実際の海でもあると同時に、大人としての人生の第１歩を踏み出した瞬間、開けて見えるだろういろいろな発見や苦悩、感動、そして自立であるだろう。不吉な象徴とされている緋色の目を持つ少女が今まさに自分という意味を見出すために旅立とうとしている。物語的展開の曲。　…松本慎一郎

お互いを完全に理解することは出来ないからこそ恋愛というものは存在する。女性の視点では、恋愛によって生じた理解できない部分の差異というもののひとつに秘密があるとしたら…。本当は嘘をつきたくない、でも、あくまで感覚的に差異を合理化している「わたし」がいる。複雑な心情を描いた楽曲。　…松本慎一郎

「護る」という言葉は言葉にすれば簡単に表現できるが、実際にはどれだけの勇気や決意が必要なことだろう。しかし、もう迷いは無い。今まさに門が開かようとしている。その決意がまさに昇華しようとする瞬間、それを夜と朝の境界になぞらえて表現してみようと試みた、大変ファンタジックな曲である。　…松本慎一郎

Proschenieとはロシア語の欧文表記でПрошение（プラシェーニエ）＝「許し」という意味。人間は何のために許しを請おうとするのか。決して正当化するためではなく、理性が残した最後の良心なのか。少女が罪を犯したことに対して、客観的な視点に立ち音楽によって裁きを表現しようとした楽曲。　…松本慎一郎

慈愛というものは、ときに受け入れられない「死」をも包み込む。いや、「死」というものは正に長い時間によって慈愛に包まれ理解をしていかなければならないのかもしれない。別々の理由で絶望の境地にある２人が慈愛によってそこから克服していく様は決してラディカルでないことを示そうとした。　…松本慎一郎

少しロック調の要素を取り入れ、若者の心理を描こうとした。何もかも上手くいかないときの若者の溢れる感情は音として或いは音ではない叫びとなり形となる。その叫びこそ困難を乗り越える力となり、いつしかトンネルから抜ける。個人的な感想ではあるが、めずらしくメッセージ性の強い曲であると思っている。　…松本慎一郎

生まれたときから少年は命を捧げなくてはならない運命を背負っていた。如何とも出来ない中でも一人の旅人と出会い、ひとつの目的を見出す。結果だけを見れば報われないだけでも、少年にとっては結果が重要ではないことを悟る。少年は旅人とどんな言葉を交わしたのだろうか。ロマンティックな楽曲。　…松本慎一郎

いちばん表現したかったのがモヤモヤした中から透明性を導きだせる音楽性であった。隣り合った音同士を同時に演奏すると音が濁る。しかし、この曲の１つ１つの和音はすべてそうした濁った和音である。この曲を通して演奏してはじめて、透明なひとつの光が見えるように試みた、素朴な、しかし深い曲。　…松本慎一郎

不遇な少年はせっかく掴んだ好機で失敗をしてしまう。そのとき現れた少女と出会ったことにより立派な道化師を目指そうとした自分の大切な何かを取り戻すことができた少年。空腹ではあるが、心は満腹に満たされたのであった。少年にとって大切な何かとは？心が温まる、たいへん絵本的な楽曲である。　…松本慎一郎