2017.05.19 担当:春木
- [十二羽目]
……はやく冬になって欲しい 
暑かったり寒かったり晴れたり雨降ったり……どれかにして欲しい。
俺……涼しいところに避難してるね。

- …………。

- ……な、なあ。アレ大丈夫なの?

- 大丈夫って何が?

- めっちゃフラフラしてるけど。

- ああ、毎年のことだから。
冷蔵庫でも探してるんだろ。 
- あーまあ、冷たいもん飲めば多少は――

- 顔突っ込むのはやめろって言ってるんだけどな。

- 突っ込む? どこに?

- 気づくと冷蔵庫に顔を――って、何変な顔してるんだ?

- そっち!? 冷蔵庫の目的そっちなの!?

- そりゃあ俺だってあんまり暑いと「冷蔵庫の中に入ったら涼しいだろうな~」とか考えちゃうけども!

- 春木は業務用冷蔵庫見つけたら全身入ろうとする。

- うわー知りたくなかった一面。良い子は真似しないでねー。

- ちょっとシリアス度高い子だからいじっちゃいけないと思ってたわー。
そもそもまだ5月だし。
今からこんな状態なら夏本番どうすんの? 
- そのときはまあ……さすがに脱ぐんじゃないか?

- ……脱ぐ?

- 春木って暑いの苦手っていう割に厚着なんだよ。
あいつが半袖になるところ見たことないし。 
- ……確かに。想像できない。

- まあ、俺も暑いのはそんなに得意じゃないから気持ちは分からなくもないけど。

- いや、半袖になればいいだけじゃん。
よく考えれば一也もあんま脱ぎたがらないし。
なんなの!? 日焼け対策なの!? 
- 特に意味はないけど。
……なんでそんなに興奮してんだ? 
- 呆れてんだよ!!
男子校とか夏はほぼ裸だからね! 
- お前男子校出身じゃないだろ。

- …………そうでした。
なんか途中から俺も自分のテンションが分からなくなった。 
- とりあえずあの子どうする?
すみっこで座り込んでるけど……。涼しいのかな……。 
- そのうち保護者が迎えに来るだろ。

- 保護者?

- あー……弟くんか。
よくよく話を聞くとさー。
生活能力は弟くんのが断然上だよな。 
- 女子受けしそうな顔で料理も上手くて甘え上手とか、普通に考えてスペック高すぎじゃね?

- 料理が上手いってのは認めるけど性格の方は……。

- そこはほら! 人の好みは色々ですから!
これで弟くんが女の子だったらなー。 
- 女だったら……何かあるのか?

- あーうん。
お前は身近に完璧ともいえる妹ちゃんがいるからねー。 
- 可愛くてー家事も出来てーとにかく可愛い妹ちゃんがー。

- …………。

- 黒髪なのも俺的にはポイント高いっつーか。
あーでも、髪アップにしてるところも見てみたいなー。
うなじとか絶対綺麗……あれ、なんで怖い顔してんの? 
- お前さ、いい加減人の妹で変な妄想すんのやめろ。

- 妄想じゃないですー。
可愛くて優しくていい子な妹ちゃんが欲しいって願望を口にしてるだけですー。 
- いやだからそれを自重しろって言ってんだよ!
そんなに妹欲しいなら夏木のやつを一日借りろ。完璧なんだろ? 
- えー。欲しいのは妹ちゃんだってば。
スペック高くても男じゃ意味ないんだって。 
- …………。

- めんどくせえって顔すんのやめてよ。傷つく。

- ……チッ。

- いちやくーん。
無表情で舌打ちもやめてくださーい。 
- わかったって。
もう妹ちゃん欲しいって言わないから機嫌直してよ。 
- お前もう、彼女作れよ。

- ……一也知ってる?
彼女って、工作キットで作れないって。 
- 染谷が彼女出来ない理由ってやっぱり煩いからなのか?

- え、なんで本人に問いかけてくんの?
というか俺、結構モテるよ? 告白とかされるよ? 
- …………。

- 嘘じゃないって!
高校でも大学でもバレンタインにチョコめっちゃ貰うし! 
- …………。

- 春木くーん。おねがーい。こっち来てー。
一也のせいでこの辺の空気、めっちゃ涼しいからー。
むしろ寒いぐらいだからー。 
- ……ふふ。賑やかで楽しそうだなあ。
僕も混ざりたいんだけど、水を指すのも悪いから今日は遠慮しようかな。 
- さて、本題に移るね。
来週(5/24)は僕が出演している五ノ仔が発売となります。 
- 僕と彼、どちらを選んでもいいんだよ。
君にとって最善だと思う悪夢を選んでくれればいい。 
- ふふ。……楽しみだなあ。

- 悪魔である彼との未来も、人間である僕との未来も、君にとって行きつく先は一緒なんだ。

- ただ、過程が変わるだけ。
ただ、得られる快楽の種類が変わるだけ。 
- 君はどちらを選んでもいい。
僕と彼で、蕩けるほどの甘い言葉を囁き続けて、心も身体も快楽で満たしてあげるから。 
- ……っと、そうそう。
忘れるところだった。
彼と王様の設定資料を預かってきてるから紹介するね。 
- うーん。
彼は初期設定とあんまり変わらない……かな?
腕をまくっている姿は見たことないけど、暑いとか寒いっていう概念が無さそうだよね。 
- 僕は暑いのも寒いのも結構好きかな。
一番好きなのは梅雨の時期で、雨がしとしと降る音を聞きながら本を読むのがすごく心地いいんだ。 
- さて、次は王様の紹介ね。

- 僕が知っているのは前髪を真ん中で分けた姿なんだけど、ふふ……もう片方のはなんだか少し若い感じがするね。
実は僕、王様と会話をしたことがないんだけど、今度王様とゆっくり話をしてみようかな~ 
- あとは……うーん。
王様については僕より彼の方がずっと詳しいんだけど、今日は出てくるつもりがないみたい。 
- だから……ごめんね?
王様には自分で出向いて貰うから今日はこの辺で帰るね。 
- ……ふふ。
あと少しで会えるから、余所見しないで待っててね。




