2016.12.16 担当:春木
- [三羽目]
……もう紹介することないよ? 
……もう紹介すること残ってないし、解散でいい?
今日は夏木がおやつにドーナツ作ってくれるって言ってたから、早く帰りたい。

- はるは僕が作ったお菓子美味しいって言ってくれるから嬉しい~

- だって本当に美味しい。

- ……ふむ。
それは是非私も賞味させて頂きたいですね。 
- あれ? 叶さんだ~

- …………。

- 楽しげな催しをされているようでしたので足を運んだのですが……お邪魔でしたか?

- …………。

- はる? どうしたの?

- 夏木。
俺の分……減っちゃう? 
- ……はる。悲しまないで。大丈夫だよ。
いーっぱい作ってあげるからね! 
- うん、待ってる。

- ふふ。仲が良くて微笑ましいですね。

- そういえば叶さんって。

- 普段何食べてるの?

- 何を、と改めて聞かれますと困りますね。

- 容れ物は人間ですから、お二人と同じ物を食すことは可能ですよ。

- ふーん。
でも、叶さんが焼き肉とか食べてる姿を想像するとちょっと面白いかもー 
- ……焼き……肉……。

- ……はる?

- …………。
- 春木が無言でプルプル震えている。

- あれ? 面白かった? 想像しちゃったの?

- ……えっと、えっと。
叶さんが屋台で焼きそば作ったりしたいって! 
- っっっ……!

- 夏木さん、何を……。

- 叶さん! 見て!
はるがこんなに笑ってるの珍しいんです! 
- はる、すっごく可愛い!
ねえねえ、次はね、叶さんがね……―― 
- ………………。

- …………疲れた。

- ふふ、珍しいものを見せて頂きました。

- ……そもそも叶さんは何しに来たの?

- 叶さんも自己紹介したかったの?

- 私に人間のように語る自己などありませんよ。

- 叶さん、趣味多いのに?

- いつも本読んでるし、……博物館とか好きだって前に言ってたし。

- あ、美術の本いっぱい持ってるの、僕も見たことあるー

- おや、よくご存知で。
そうですね。
趣味……と呼ばれるものは多いかもしれませんね。 
- 自己紹介しないのって、誕生日とか知られちゃうの恥ずかしいんですか?

- いえ、恥ずかしいということでは……。

- ねえ、はる。
叶さんって何歳なのかな。 
- すごくおじさんだったりして。

- 生憎と私は自分が何百年生きているかを記憶しておりません。
人間のように数える習慣はありませんから。 
- ふーん。

- でもその身体って人間のものなんでしょ。

- そうですね。
この容れ物のことでよければ自己紹介というものをしてみましょうか。
★不死者の王★
| 誕生日 | ―(外見年齢:30代前半) |
|---|---|
| 血液型 | ― |
| 身長 | 188cm |
| 視力 | 2.5 |
| 食事 | 血液を主食とする。 人間の食べ物では桃が好き。 |
★シトリー/叶 宗司★
| 誕生日 | ―(外見年齢:28歳) |
|---|---|
| 血液型 | ― |
| 身長 | 185cm |
| 視力 | 2.0 |
| 食事 | 生気、血液を主食とする。 人間の食事もとれる。 紅茶を好んで飲む。 |

- ……桃。

- どうしました?

- はるも、桃……好きだなって思っただけです。

- 春木さんも?

- なんか、ちょっとやだ。

- ふふ。
親子揃って甘いものを好むのですね。 
- 夏木。俺、今日から辛いもの好きになる。

- ほんと!?
辛いのやだって言っていつも付き合ってくれないけど、はるに食べてもらいたいものい~~っぱいあるんだよ! 
- ……うん。

- 駅前にある行列のできるラーメン屋さん知ってるよね?
真っ赤なの! 一緒に食べようね! 
- …………うん。

- ふふ、本当に仲が良い兄弟で微笑ましいですね。
さて。
公式サイトでは続編となる「梟は夜に哭く」シリーズの情報が少しずつ更新されています。
お嬢様方は、今までの世界観とガラリと変わったことに驚かれたのではないでしょうか。
ふふ……ご安心ください。
何も変わってなどいないことを……貴方自身が体感することになるでしょう。
あの青年は私が用意した幸せな夢に溺れていく。
彼自身、自分の正体を終ぞ知ることなく……最後には選択することになるのです。
絶望と、もう一つの絶望を。
……ふふ。
この屋敷に足を踏み入れた時点で、どんなに足掻いたところで行き着く先は決まっている。
この私が描いた終焉への道からは、外れることなどできない。
たっぷりと、心の底から……足掻き続けなさい。
そして……快楽に、溺れてゆきなさい。


