2017.02.17 担当:染谷
- [八羽目]
バレンタインのチョコってそれだけで特別だよね~ 
あー困った。
妹ちゃんから貰ったチョコレートケーキ。
嬉しいけど……。
すっごく嬉しいんだけど……食べるのもったいなくて……。

- あ。

- ん?

- …………。

- じっと見つめてきて……どした?

- 染谷さんが持ってるチョコのケーキ。

- お、気づいた?

- ふっふっふー。
妹ちゃんから手作りケーキ貰っちゃった♪
もう手作りってだけで本命感あるよな~ 
- …………。

- 春木くん?

- よかったね。

- あ、うん。

- …………おかしい。
いつももっと辛口な反応が返ってくるのに……。 
- はーる。
染谷くんの相手なんてしてないで早く彼女のところ行こうよ。 
- あれ?
染谷くんが持ってるのって……。 
- お、弟くんも気づいた?
これさあ妹ちゃんから―― 
- 一也くんと僕が手伝った義理チョコ、なんで染谷くんが持ってるんですか?

- ……え?

- あの子がね、普段お世話になっている人にあげたいの、って可愛いこと言うから手伝ってあげたんです。

- 学校のお友達とか~先生とか~みーんなに配るから一人じゃ大変だもんね。

- …………。

- 感謝の気持ちを伝えるって大事ですよね~

- 夏木。
そろそろ可哀想だからやめてあげたら? 
- ……ふふ。
染谷くん、ごめーんね? 
- いい加減にからかうのはその辺にしておけ。
落ち込むとコイツ面倒くさいから。 
- ……一也冷たい。

- そもそもお前らだって同じケーキ貰ってただろ。

- ……同じじゃないもん。
僕と一也くんが手伝っていない、正真正銘彼女だけが作ったやつを貰いました! 
- いや、アウトじゃん?
義理チョコだと思う。 
- ちーがーいーまーすー。

- 違くないしー。
百歩譲って義理チョコじゃなくて友チョコだしー。 
- 二人とも小学生みたい。

- ……いや、小学生に失礼だろ。

- はる!
僕らが貰ったのって本命だよね!? 
- さあ?

- 別にどっちでもいい。
それよりアレ……やるんじゃないの? 
- あっ!
そっか、忘れてた。早く行かないと! 
- アレって?

- 僕らから、あの子にチョコをプレゼントするんです。

- お、なるほどなー。
最近って男からもあげるっていうよな。 
- 春木、夏木。
もしかして大量に買い込んでいたチョコって。 
- うん。

- 彼女のためにチョコのお風呂を作ってあげるんです。

- ……は?

- あとは~
チョコフォンデュパーティーして~
彼女と一緒にチョコをかけ―― 
- すとーーーーーーぷ!!!!!

- だめ! ぜったい! 高校生にはまだ早い!!!!

- 染谷くんに反対される筋合いないんですけど。

- でも夏木。俺もちょっと不安。

- はる……。
大丈夫だよ、安心して?
最初は隠し味でちょっと入れるだけだから。 
- ……ん? 隠し味?

- だって、チョコレートとカレーとか……想像すると怖い。

- カレーに入れるのは最後にちょっとだけだよ。
コクが出て美味しくなるって、本に書いてあったし。 
- え、ちょっと待って。何の話?

- 夏木と彼女が一緒にチョコを使って料理をするって話。

- お菓子だけじゃなくて、カレーとかミートソースとか、料理の隠し味に入れるんです。

- あ、あー……そういうことね!
よかったー。
お兄さんビビっちゃったよ。 
- 染谷さん、何を想像してたの?

- ……聞かないで。
君らには純粋なままでいて欲しい。 
- でも夏木。
料理で使ったらお風呂作れなくなるよ? 
- えー!?
それはやだ!
彼女と一緒に三人で入ろうって言ってたのに。 
- ……!?

- 俺もやだ。
三人で甘いチョコいっぱいのお風呂入りたい。 
- うーん……。
じゃあ料理は今度にする? 
- あのさ、ちょっと待ってね。
さすがにお風呂はまずいでしょ。 
- ……どうして?

- どうしてって……。

- 子供の頃は一緒にお風呂に入ったよ。

- プールとか今でも一緒に行きますよ。

- えー……。
これ絶対分かってて、どうしてって聞いてるでしょ。 
- 発想が毎回、予想の上すぎるってあの双子……。
つか、一也も止めてよ。 
- 本当にやろうとしたらあいつが自分で断ると思うし。

- そうかもしんないけどー。

- あ、そういえば一也って料理できたっけ?

- 溶かすの手伝った。

- あー……湯せんね。

- チョコ刻んだりもした。

- 量あると大変だもんな~

- ……というか、取り乱しちゃったけどさ、俺だって本命じゃないのは分かってたんだよ。

- 妹ちゃんってそういう子じゃん?
みんなに平等に優しいっていうか。 
- ……そうだな。
優しすぎてちょっと心配だけど。 
- はは。
まあ兄としてはそうだよな。 
- 安心してよ一也。
俺……ちゃんと大事にするよ。 
- ……染谷。

- 選ぶのは……あいつ自身だからな?

- あ、うん。わかってるよ?
だからそんな真剣な顔して言わないで?
めっちゃ切なくなる……。


